市場の風を読む

Morgan Stanley

330億ドル規模のAIセキュリティ市場機会

SEP 1, 20267 MIN

Description

AIエージェントが企業の機密システムにアクセスするようになる中、企業には、その行動を制御する新たな方法が必要です。ミータ・マーシャルが、エージェント型AIのアイデンティティ・セキュリティという新興市場について解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 今回のエピソードでは、弊社の米国サイバーセキュリティおよび通信・ネットワーク関連機器アナリスト、ミータ・マーシャルが、職場で私たちに代わって行動し始めているAIアシスタントを取り上げ、重要な問いを投げかけます。こうしたエージェントには、どのような行動を認めるべきなのでしょうか。そして、その権限はどのように付与すべきなのでしょうか。 このエピソードは9月1日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 私たちが日々の仕事をこなすうえで、AIの助けを借りる場面はますます増えています。文書の要約やデータ分析、会議中のメモ作成などをAIに頼んでいます。ただし、こうしたツールは単に質問に答えるだけの存在から、私たちに代わって行動する存在へと次第に軸足を移しつつあります。 そうなると、セキュリティ上の課題は、単にツールを管理することから、まったく新しいデジタル労働力全体を統制することへと大きく変わります。弊社の推計では、今後数年のうちに、人間の従業員1人当たりAIエージェントが79個、マシン・アイデンティティが109件に達する可能性があり、この問題はさらに大きくなるとみられます。 従来の職場におけるアイデンティティ・セキュリティは、「あなたは誰か」「何にアクセスできるか」という2つの基本的な問いに答えるために構築されてきました。オフィスの入館証を思い浮かべてください。入館証は本人を識別し、どのドアを開けられるかを決めます。 しかし、AIエージェントの場合、この問いに答えるのははるかに難しくなります。AIエージェントは自律的に動作し、複数のアプリケーションやデータベースを横断し、ほかのエージェントと協働できます。また、人が直接関与しなくても行動を起こします。 そのため企業は、エージェントが何にアクセスできるかだけでなく、なぜアクセスが必要なのか、どのくらいの期間必要なのか、そして実際に何をしたのかまで把握する必要があります。これが、エージェント型AIのアイデンティティ・ソリューションを支える中核的な基盤です。 この問題がもたらすリスクは、すでに相当な規模に達しています。現在、職場環境で起きる侵害のおよそ80%には、盗まれた、または不正利用された認証情報が関係しています。過去1年間に、10社中9社がアイデンティティ関連の侵害に遭い、83%が2回以上経験しています。ここに、人間1人当たり数百に上る可能性のあるマシン・アイデンティティやAIアイデンティティが加わり、それぞれが常時、機械の速度で稼働すると考えると、問題ははるかに大きくなります。 AIエージェントを管理する方法の1つが、常設権限ゼロです。 エージェントに恒久的なアクセス権を与えるのではなく、特定のタスクを実行するための権限だけを付与し、作業が完了したらその権限を取り消します。ただし、ここには課題があります。現在、特権アクセスのうち、このジャスト・イン・タイム型、または常設権限ゼロの仕組みで管理されているのは39%にすぎません。しかも現実には、すべての申請を人が承認することはできません。今後は、ランタイム・ガバナンスと呼ばれる仕組みを通じて、より多くの判断をリアルタイムで自動的に行う必要があります。 その結果、弊社の基本シナリオでは、エージェント型AIのアイデンティティ市場だけで、世界全体で約330億ドルの市場機会になり得ると推計しています。これにより、アイデンティティ市場全体では、今後数年で600億ドルを超える規模になります。 I普及によってエージェント型AIのアイデンティティへの需要が高まれば、これまで細分化されてきた業界が、より統合されたプラットフォームへと向かう可能性もあります。ある業界調査では、組織の85%が、分断されたアイデンティティ・システムによってアイデンティティ脅威への人的対応が遅れていると回答し、回答者によると、1件のインシデントへの対応には平均12時間を要しています。弊社は、人間とマシンのアイデンティティを一体的に管理し、セキュリティ上の判断を状況に応じて柔軟に下せるプラットフォームが有利になると考えています。それが、全体として、より安全な環境につながると考えています。 この移行は一夜にして進むものではありません。エージェント型AIのアイデンティティ製品はまだ初期段階にあり、直ちに業績へ影響が表れるとはみていません。しかし、企業がAIエージェントの実験段階から、より広範な導入へと移行するにつれ、こうしたエージェントを保護するための支出は、2027年に一段と意味のある成長の追い風となる可能性があります。 より長期的な成長機会は、単純な構図に集約されます。エージェントの数が増え、自律性が高まるほど、より強い統制が必要になります。そして、企業全体でAIの活用を拡大するうえで、アイデンティティ・セキュリティが不可欠になる可能性があります。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。