市場の風を読む

Morgan Stanley

AI投資ブームは報われるのか

SEP 9, 20267 MIN

Description

大手テクノロジー企業はAIに1兆4,000億ドル超を投じており、投資家は「それに見合う価値はあるのか」と問いかけています。弊社の米国インターネットアナリスト、ブライアン・ノーワックが、生成AIを活用するテクノロジーで25%~50%のリターンを生み出し得る3つのビジネスモデルについて考察します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 今回のエピソードでは、弊社の米国インターネットアナリスト、ブライアン・ノーワックが、生成AIを支える巨額の投資が実際に報われるのかについて考察します。 このエピソードは9月9日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 AIは急速に日常生活に入り込んでいます。ソフトウェアの作成、購入前の調査、業務の自動化、情報検索など、数え切れないほど多くの用途で人々を支援しています。 しかし、こうした活動のすべて、そして今後さらに増えていく活動を支えるには、非常に大規模なインフラの整備が必要です。 弊社の推計では、大手クラウドプロバイダーは来年だけで、このAI基盤整備に1兆4,000億ドル超を投じる見通しです。そして、演算能力は2025年から2028年にかけて4倍になる可能性があり、およそ120ギガワットに達するとみています。 しかし、こうした支出の拡大は、投資家の間に多くの疑問を生んでいます。最もよく聞かれる問いの1つは、これらの企業がこうした何兆ドルものデータセンター・インフラ投資から、どの程度の投下資本利益率を得られるのか、というものです。 この問いに対して、弊社のボトムアップ分析は心強い答えを示しています。 弊社は、新たに登場しつつある3つのAIビジネスモデルにおいて、およそ25%~50%の投下資本利益率、つまりROICを実現する道筋があるとみています。ROICは、投資が採算に合うかどうかを測るうえで有用な指標です。最初に必要となる資本に対して、税引き後営業利益をどれだけ生み出せるかを示す指標と考えるとわかりやすいでしょう。 弊社が分析した最初のビジネスモデルは、演算能力の貸し出しです。これはAI経済のインフラ層にあたります。クラウドプロバイダーは、高性能の画像処理半導体、つまりGPUを備えたデータセンターを構築し、その演算能力を顧客に貸し出します。弊社の基本ケースでは、大規模な次世代データセンターは、AI向け演算能力を貸し出すだけで、およそ30%の投下資本利益率を生み出すことができます。 また、貸出価格が変動したとしても、弊社のシナリオでは、リターンは20%台前半から40%近くまでの範囲となります。したがって、こうした施設の建設に多額の費用がかかり、大きな資本が投じられるにもかかわらず、この分野の経済性はかなり魅力的だと考えています。 弊社が分析した2つ目のビジネスモデルは、AIラボが自社のモデルを持ち、さらに自社のインフラも保有するケースです。こうした企業は、APIを通じて消費者や企業にモデルへのアクセスを提供し、利用者はそのモデルを活用します。場合によっては、そのモデルを使ってアプリケーションを開発し、それが将来的に経済全体の生産性や効率性を高める源泉となる可能性があります。 このシナリオでは、経済性はさらに高くなる可能性があると弊社は考えています。モデル開発企業が基盤となるインフラを自社で保有している場合、弊社の基本ケースでは、およそ75%の増分営業利益率と、40%超の投下資本利益率が生み出されます。 こうした投下資本利益率は目覚ましいものですが、では、これらのリターンが実際に実現するかどうかを左右する要因は何でしょうか。 2つのことが非常に重要です。1つ目は、開発企業がトークンに対してどの程度の価格を設定することができるかです。トークンとは、AIモデルが処理する情報の単位です。2つ目に非常に重要なのは、このインフラがどれだけ効率よくトークンを処理できるかという点です。 だからこそ、GPU1基が1秒当たりに処理できるトークン数を高めるために、半導体とソフトウェアの改善が続くことが、このAIエコシステム全体の長期的なユニットエコノミクスにとって極めて重要なのです。 弊社が分析した3つ目のモデルは、AI開発企業が演算インフラを自社で保有するのではなく、外部から借りるケースです。つまり、必要なデータセンターやGPUについて、実質的に他社に対価を支払う形になります。他のプロバイダーがユニットエコノミクスの一部を取り分けるため、投下資本利益率は低下しますが、それでも弊社の基本ケースでは、およそ30%の増分営業利益率と、税引き後で25%のリターンを得られる可能性があります。 このように、AI基盤整備には巨額の投資が必要ですが、支出の規模だけでは、今後経済的リターンが得られるかどうかの全体像は見えてきません。 最終的に重要なのは、そのインフラがどれだけの収益と利益を生み出せるかです。そして、インフラの用途がAIモデルの学習から、新たな製品や推論を通じた顧客向けサービスへと移っていくにつれて、投資家が今問いかけているこの疑問に対し、はるかに明確な答えが見えてくると弊社は考えています。 こうした支出には、それだけの価値があったのでしょうか。弊社のリサーチが示す答えは、「イエス」です。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。