トランプ大統領が次期FRB議長に指名したケビン・ウォーシュ氏が、4月21日に上院で証言しました。弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、2時間半にわたる証言の重要なポイントを解説します。

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トランスクリプト 

 

「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

 本日のエピソードは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツがお届けします。次期FRB議長候補について、まずは全体像を見ていきます。

このエピソードは4月24日にニューヨークにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

金融市場が一度に複数のストーリーを追うことに苦労する場面は少なくありません。今回は、まさにその限界にさしかかっています。一方では、イランをめぐる情勢によって、世界のエネルギー市場で歴史的な混乱が続いています。もう一方では、企業の積極姿勢や活動の兆しから、この混乱が収束すれば、さらに大きな景気拡大につながる可能性が示唆されています。

M&A、設備投資、融資の伸び、そして利益成長はいずれも力強く、加速しています。そうした状況に、第三のストーリーとしてFRBが加わります。実際、イラン情勢も投資ブームも、中央銀行がこうした要因にどう反応すべきかという現実的な問いを投げかけています。

例えば、原油価格がさらに急騰した場合、中央銀行は、その後に起こり得るインフレに対抗するために利上げすべきでしょうか。それとも、原油高が景気を押し下げる可能性があるため、利下げすべきでしょうか。では、企業の積極姿勢についてはどうでしょう。企業の攻めの姿勢が強まる中で、FRBは市場の熱気を冷ますために利上げをして、景気が一段と過熱するのを避けるべきでしょうか。あるいは、投資が供給の拡大につながり、実際には物価を押し下げ、利下げを正当化するかもしれません。

こうした問いはFRB、とりわけ、トランプ大統領から次期FRB議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏に重くのしかかることになります。今週、議長就任に向けた承認手続きの一環としてウォーシュ氏は上院で証言し、同氏の現在の考えについて、これまでで最も詳しい洞察が提供されました。

特に印象的だった点は、二つあります。第一に、ウォーシュ氏は、AIとテクノロジーへの歴史的な投資ブームが、生産性を押し上げる可能性が高いと考えています。他の条件が同じなら、生産性が上がれば、同じ人数の労働者で、より多くの財やサービスを供給できることになり、供給が増える分、相対的に物価は低くなり、インフレも抑えられます。投資による生産性向上への信頼こそが、足元のインフレ率が高くとも、利下げが可能と考える根拠になっています。

第二に、ウォーシュ氏は、バランスシートの過度の拡大から、コロナ禍後のインフレ抑制策の遅れまで、FRBが「道を見失った」と述べて批判しました。また、インフレ予測の手法、資産の運用管理、そして政策コミュニケーションのあり方などを含む、大幅な改革案を示しました。

ただし、次期FRB議長が直面する課題としては、経済面と同じくらい、人的側面も重要になるでしょう。FRBの意思決定は多数決で行われます。ウォーシュ氏は、テクノロジー分野で進む歴史的な投資サイクルがインフレを押し下げるという点に強い確信を持っているかもしれませんが、足元のインフレ指標がやや高めの局面で、他のメンバーもその見解に納得するでしょうか。さらに、ここ数年のFRBの対応を批判したことは、当時の政策運営に関わっていた同僚の支持を得るうえで、障害になるのでしょうか。それとも、新風を吹き込み、FRBが新たに出直すチャンスにつながるとして歓迎されるのでしょうか。

交代のタイミングが不透明であること、そして政策が依然として委員会次第であることを踏まえると、目先は市場が引き続き他の要因に注目するなか、FRBの政策も今のところは比較的小幅な変更にとどまる可能性が高いと弊社は見ています。ただし、引き続き注視する価値は十分にあります。

1979年以降、米国の中央銀行を率いるこの重要な役職を務めたのは、わずか5人です。まもなく6人目が誕生するかもしれません。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

市場の風を読む

Morgan Stanley

ウォーシュ氏のFRB改革計画

APR 24, 20266 MIN
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APR 24, 20266 MIN

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トランプ大統領が次期FRB議長に指名したケビン・ウォーシュ氏が、4月21日に上院で証言しました。弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、2時間半にわたる証言の重要なポイントを解説します。このエピソードを英語で聴く。  トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツがお届けします。次期FRB議長候補について、まずは全体像を見ていきます。このエピソードは4月24日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。金融市場が一度に複数のストーリーを追うことに苦労する場面は少なくありません。今回は、まさにその限界にさしかかっています。一方では、イランをめぐる情勢によって、世界のエネルギー市場で歴史的な混乱が続いています。もう一方では、企業の積極姿勢や活動の兆しから、この混乱が収束すれば、さらに大きな景気拡大につながる可能性が示唆されています。M&A、設備投資、融資の伸び、そして利益成長はいずれも力強く、加速しています。そうした状況に、第三のストーリーとしてFRBが加わります。実際、イラン情勢も投資ブームも、中央銀行がこうした要因にどう反応すべきかという現実的な問いを投げかけています。例えば、原油価格がさらに急騰した場合、中央銀行は、その後に起こり得るインフレに対抗するために利上げすべきでしょうか。それとも、原油高が景気を押し下げる可能性があるため、利下げすべきでしょうか。では、企業の積極姿勢についてはどうでしょう。企業の攻めの姿勢が強まる中で、FRBは市場の熱気を冷ますために利上げをして、景気が一段と過熱するのを避けるべきでしょうか。あるいは、投資が供給の拡大につながり、実際には物価を押し下げ、利下げを正当化するかもしれません。こうした問いはFRB、とりわけ、トランプ大統領から次期FRB議長に指名されたケビン・ウォーシュ氏に重くのしかかることになります。今週、議長就任に向けた承認手続きの一環としてウォーシュ氏は上院で証言し、同氏の現在の考えについて、これまでで最も詳しい洞察が提供されました。特に印象的だった点は、二つあります。第一に、ウォーシュ氏は、AIとテクノロジーへの歴史的な投資ブームが、生産性を押し上げる可能性が高いと考えています。他の条件が同じなら、生産性が上がれば、同じ人数の労働者で、より多くの財やサービスを供給できることになり、供給が増える分、相対的に物価は低くなり、インフレも抑えられます。投資による生産性向上への信頼こそが、足元のインフレ率が高くとも、利下げが可能と考える根拠になっています。第二に、ウォーシュ氏は、バランスシートの過度の拡大から、コロナ禍後のインフレ抑制策の遅れまで、FRBが「道を見失った」と述べて批判しました。また、インフレ予測の手法、資産の運用管理、そして政策コミュニケーションのあり方などを含む、大幅な改革案を示しました。ただし、次期FRB議長が直面する課題としては、経済面と同じくらい、人的側面も重要になるでしょう。FRBの意思決定は多数決で行われます。ウォーシュ氏は、テクノロジー分野で進む歴史的な投資サイクルがインフレを押し下げるという点に強い確信を持っているかもしれませんが、足元のインフレ指標がやや高めの局面で、他のメンバーもその見解に納得するでしょうか。さらに、ここ数年のFRBの対応を批判したことは、当時の政策運営に関わっていた同僚の支持を得るうえで、障害になるのでしょうか。それとも、新風を吹き込み、FRBが新たに出直すチャンスにつながるとして歓迎されるのでしょうか。交代のタイミングが不透明であること、そして政策が依然として委員会次第であることを踏まえると、目先は市場が引き続き他の要因に注目するなか、FRBの政策も今のところは比較的小幅な変更にとどまる可能性が高いと弊社は見ています。ただし、引き続き注視する価値は十分にあります。1979年以降、米国の中央銀行を率いるこの重要な役職を務めたのは、わずか5人です。まもなく6人目が誕生するかもしれません。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。