体重管理療法がこのところ急速に取り入れられていることは、医療はもとより消費者行動、さらにはグローバル市場にも影響を及ぼす可能性があります。弊社米国医薬品・バイオテクノロジー責任者のテレンス・フリンがご説明します。このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は米国医薬品・バイオテクノロジー責任者のテレンス・フリンが、肥満症治療薬の次の成長局面、「GLP-1アンロック」すなわちGLP-1の解放についてお話しします。このエピソードは、4月17日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。医療の分野にはイノベーション、政策、そして患者の需要のすべてがひとつに収束する時期があります。そして収束するときのインパクトは医薬品にとどまらず、遠く離れたほかの分野にも及ぶことがあります。弊社では、肥満症治療薬「GLP-1薬」を用いる治療法がそのような時期に入っているとみています。弊社の推計によれば、肥満・糖尿病患者向けの肥満症治療薬の市場はピーク時で1900億ドル前後に達する可能性があります。以前の予想よりもかなり大きな数字ですが、これは市場が導入初期からより幅広くスケーラブルな拡大が見込める局面にシフトしたことの反映です。GLP-1薬はここ2、3年で注目度が著しく高まっているものの、実際の普及率はまだ比較的低いのが実情です。治療に適した肥満症患者のうち、実際にGLP-1薬で今日治療を受けている患者の割合は、米国ではおよそ6%にすぎず、米国外ではわずか2%にとどまっています。したがって、これまでの成長は大幅ではあるものの、実はまだ初期段階なのです。だからこそ、今は非常に重要な時期だと言えます。では、導入の次の局面を後押しする5つの原動力を見ていきましょう。1番目は経口薬への移行です。体重管理療法は昔から注射薬で行われており、それが普及の制約になっています。しかし、飲み薬という新たな選択肢により、状況は変わりつつあります。特に、経口GLP-1薬利用者の80%弱は経口薬に初めて切り替えた患者であり、市場が今後実際に拡大してゆくことが示唆されます。2番目の原動力は、メディケアを通じた利用機会の拡大です。米国の新たな枠組みでは、肥満症治療薬を利用できる機会が数千万人に上る高齢の患者に開かれます。自己負担額は月当たり50ドル前後にとどまる可能性があるようです。これは重大な変化です。肥満症治療薬の利用が大幅に拡大するかもしれません。3番目は、薬価の引き下げと保険適用の拡大です。これらはすでに進行中で、患者の自己負担額の平均は 去年昨年の170ドルから120ドル前後に低下しています。また同時に、肥満症治療費の雇用主負担の割合も、去年 昨年の50%弱から およそ約65%に2027年までに引き上げられる見通しです。4番目はグローバルな利用拡大です。米国外では、利用量は価格に比較的敏感なのですが、市場としての機会は巨大です。コストが下がり、かつ保険で利用しやすくなるにつれ、とりわけ中国やブラジルなどで導入が加速すると思われます、5つ目の理由は、減量を超越するイノベーションです。今日では、体重管理療法を心血管疾患や腎臓病、さらには炎症や神経障害といったほかの病気や体調不良の改善に利用する研究がますます行われるようになっています。肥満症治療薬で対応可能な市場が、今後さらに拡大する可能性があるのです。では、GLP-1薬市場はどこまで拡大する可能性があるのでしょうか。世界全体でいえば、GLP-1薬での治療に適した患者の数はおよそ13億人だと弊社では推計しています。そして弊社のシナリオの基本ケースでは、このうちのおよそ12%が2035年までに治療を受けるとともに、米国での普及率はおよそ約30%になると想定しています。するとこのレベルにおいてさえ、市場規模は1900億ドルになると試算されます。強気ケースでは、 およそ 約2400億ドルに達する可能性もあります。しかし、この話は医療だけでは終わりません。弊社推計によれば、GLP-1薬の導入は米国のカロリー消費を2035年までに[6] およそ約1.6%減らす可能性があります。わずかな比率に聞こえるかもしれませんが、数量で考えれば大変な影響があります。消費者行動はもとより、食品、小売り、医療サービスといった産業にまで波及することになるでしょう。そうです。これが「GLP-1アンロック」です。私たちは今、経口薬、利用機会の拡大、継続中のイノベーションという3つの原動力により、ひとつの大きな転換点に接近しつつあります。治療に適した患者のうち、実際に治療を受けている人の割合はまだ小さく、成長の余地はかなりあります。本質的には、これは慢性疾患の治療法とそれによる市場の再編という、長期的な構造変化なのです。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。